雑 感

遠野物語 

今回は、柳田国男の「遠野物語」をご紹介させていただきます。この物語は1908年に生まれました。遠野物語を一言で言うと、妖怪話集ですね。ゲゲゲの鬼太郎の世界と同じです。僕は毎晩寝る前に、この遠野物語を睡眠薬代わりに読んでから寝ています。座敷ワラシのかわいい話が出てきたと思いきや、子殺しのショッキングな話も出てきます。一つ一つの物語は大変短く、中には10行くらいで終わっているものも少なくありません。だから寝る前の睡眠薬代わりにちょうど良いのです。
妖怪や神や幽霊が出てくる作り話なのですが、読んでいるうちに、「あれ、これって本当にあった話じゃないの」と感じてきます。
遠野物語
柳田はこの本の序文(7ページ6行目)で「願わくはこれを語りて平地人を戦慄せしめよ。」と言っています。いつも強気な柳田らしい言いっぷりだなと思うのですが、柳田はどうやら日本民族を平地人と山人に分けて考えているようです。
平地人とは、田植えをし組織的に生活の糧を得ていく平野に暮らす人々です。一方、山人とは銃や刀を身につけ狩猟を生活の糧とするマタギや山伏のような人々です。
我々経営者は、どちらかと言うと平地人でなく山人にちかいのではないかと考えます。
一般平地人から私たち経営者を見ると、「何が楽しくてリスクを背負って経営なんてやっているのかね、そんなに金が欲しいかね」と感じられるかもしれません。しかし、私たち経営者自身には自覚があります。こういう生き方しか出来ないんだと。勤め人がイヤなのではなく、経営者という生き様しか描けない、ある意味不幸な人間なのだと。
柳田国男の深い洞察力は、その部分にまで入り込んできます。そして、「いいんだよ。それでいいんだよ。借金背負って大変なこともあるだろうけどさ。それさえも人間らしさだよ。」と優しく慰めてくれる、ように僕は感じています。
柳田国男の考え方は、富国強兵で日本の原型をつくった福澤諭吉のそれとは全く違うものがあります。経済最優先の窮屈な時代を生きる我々にとって、柳田の考え方は何かヒントを与えてくれるものがありますので、今後も柳田の考え方をご紹介させていただきたいと思います。

書籍名:遠野物語・山の人生
2014年9月5日 第5刷発行 著者:柳田(やなぎだ)国男(くにお)
発行所:岩波書店 発行者:岡本厚